工夫の手順

では、ここから具体例を用いた工夫の手順を論じる。


 一萬三萬四萬四萬五萬八萬八萬三筒五筒九索東東白中

 ドラ 九筒

上記配牌は東一局南家のもの。
ホンイツ』に向かう方が高くて速そうな手牌だが、4面子1頭にはまだ足りない。
この手牌から、どの牌をどの順番で払っていくのか。これを順を追って検討していく。

第一打は老頭牌から

ホンイツ』狙い一本、好牌先打で 三筒 五筒 を払いたい所でも、第一打は 九索 である。
別に 四筒 の入りを期待しての事ではない。あくまでも『ホンイツ』成就のための打 九索 だ。


捨て牌の第一打目。ここにはその局における方針そのものが現れる。その場所にいきなり中張牌である 三筒 五筒 を置くことは、「私は変則手をやっていますよ」と宣伝する事に等しい。
これが老頭牌ならば、いきなり警戒する事無く、タンピン形の切り出しと考えるだろう。
字牌、特に役牌は重なりを待つため安易に捨てることはできないので、他の色の老頭牌が最有力。面子が足りていればオタ風もいいだろう。

序盤に染め色を捨てる

さて、第一打に 九索 を捨て、次のツモである。


 一萬三萬四萬四萬五萬八萬八萬三筒五筒東東白中 白


白 が重なり、これで4面子1頭の確保ができた。
さあ、ここでやっと好牌先打で 三筒 五筒 か? それとも 中 か?
まだまだ、ここは 一萬 を切っておきたい。


染め手の捨て牌において、最も効果がある工夫は「染め色の牌を序盤に捨てておくこと」である。
特に、上記手牌において 一萬 は完全に浮き牌である。
一萬 を重ねてポン材にするという考えもあるが、それよりもこれを捨て牌に並べ、『ホンイツ』の匂いを消す方が遥かに有用である。
染め手の浮き牌は序盤に捨てて河で使う。これが『ホンイツ』を和了するための秘訣である。


では、 一萬 の代わりに 九萬 があったらどうであろう?
「どうせ 東 白 を鳴くし、策を凝らして打 九萬 」。これはいけない。これでは直に 七萬 の受け入れを失うからだ。
この策はあくまでも浮き牌に限る話である。それを忘れるべからず。


メンホン七対子? 役牌が2つある時はこれを鳴いてマンガンを目指しましょう。

後は好牌先打

ここまで耐えれば、後はそれ程気を配らなくとも良い。ここから先は他家に対して危険度が高い中張牌( 三筒 五筒 等)を切っていく。
途中で字牌をツモれば、安全牌として抱えておくもの良いであろう。


元々好牌先打は、他家の攻勢を凌ぐために危険牌を先切りするのが目的の1つ。
序盤の1〜5巡目位で好牌先打をして河を温くするより、後々の出上がりを考えて河に策を作る方が良い。

結果

順調に鳴けて、下記聴牌になったとしよう。


 三萬四萬四萬五萬五萬八萬八萬 東東東 白白白


その時、捨て牌がAとBではどちらが出上がりし易いか? 答えは一目瞭然かと思う。

 パターンA: 三筒五筒九索中一萬
 パターンB: 九索一萬五筒三筒中



無論、配牌の良し悪しによっては凝らす工夫にも限度がある。
重要なのは、与えられた配牌でどれだけの工夫が凝らせるか、である。


他の色から切り飛ばしていくのは『ホンイツ』を知ってさえいれば誰にでもできる。
捨て牌にまで気を配って如何に匂いを消すか。これを実践して初めて『ホンイツ』を使いこなしていると言えるのだ。


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